東京大学史料編纂所

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大徳寺真珠庵出張報告

 昭和四十四年十一月十日から十六日まで、京都市北区紫野大徳寺真珠庵に出張し、同庵所蔵の古文書・古記録の調査・撮影を行った。昭和四十三年七月の調査に引きつづき、今回は、甲・乙・丁・戊・庚・仁函を調査し、これを撮影した。約三千コマの撮影であり、これらは「真珠庵文書」二十六冊として入架されることになっている。
 調査したもののうち、祖師忌十三年奉行帳(明応二・九・二一)・三十三回忌納下帳・出銭帳(永正七・三・二一)・百年忌奉加帳・出銭帳・下行帳(天正八・十・二一)・弐百年忌経営覚帳・借用帳(延宝八・九・二一)・弐百五十年忌借物帳・諸式留帳・納下帳(享保十五・九・廿一)・開祖三百年遠忌済会納下帳(安永九・十・廿一)・山門造営料請取状(大永三・九・廿〜大永六・五・十二)・龍宝諸法度(建武二〜寛文五)・酬恩庵評議(天文六〜寛文三)・大徳寺草創略記・碧巖見聞(八冊)・禅師号并自讃・真珠庵関係売券案文(正長〜明応年間にかけての売券・寄進状写)・祠堂銭納帳(永正十五・九)・大工数并小引日傭日記(寛永十九・三・十六)・真珠庵本坊作事方日記(慶長六・五)・真珠庵庫司再興奉加帳・作事銀子納下帳(慶長十四・七・二一)・市原野田畠注文(享祿元)・真珠庵城州分注文・越州二上国衙米納下注文(永祿八)・六角敷地譲状連券(応安六〜明応四)・真珠庵寮田畠支配注文(天正十八)・大宮郷井水普請雑用入目日記(天文十三)・三好長慶折紙・岩倉山本佐渡守折紙・九条尚実書状・波多野孫四郎書状などは、注目すべき史料である。その他数十点にのぼる田畠屋敷地の売券・寄進状・譲状などは、室町・戦国期の社会経済史研究にとって重要である。なお、「山門造営料請取状」は、その検討により、学界で話題となっている山門造営の時期が確定できる貴重な史料である。
 真珠庵文書の調査は、まだ緒についたばかりであり、その全貌を把握するためには、引きつづいての体系的調査・研究が必要であろう。
 (稲垣泰彦・佐藤和彦・高沢実)


『東京大学史料編纂所報』第5号p.134